「ウォナビー」と一緒にしないで。 そして 《2度目のヴィジョン》

マイストーリー

アメリカといえばニューヨークとロサンゼルスしかないと思っていた私が、大都市よりも先にど田舎の何もないところへ行くことになったのか・・・。いや、いまだにニューヨークは憧れですよ。 絶対に行きたい。 ・・・でも、運命の歯車!?みたいなのは、時にこちらが望むこととはまったく違うものにかみ合っていくのでした。

以前にも書きましたが、私はネイティヴアメリカンのことを全く知らなかったし、ほとんど興味もありませんでした。
人は私が『インディアンの勉強がしたくてインディアン居留区へ行った』と思われるようですが、それは後の話です。
最初はヴィジョンに出てきたことがどうしても気になって探し回らないと気が済まなくなって、結果行き着いた先がそのヴィジョンの出処だったという流れが先です。
もちろん、彼らのことを知るにつれて、アロマセラピストでもあるし、こういう形でアメリカの興味を持つのも面白いかとも思いました。

私にとってはそれまで、アメリカといえばニューヨークかロサンゼルスです。
ホームステイでシアトルに行ったことはありましたが(スターバックスが日本に来る前)、やはりニューヨークほどわくわくするイメージの場所はその頃の私にとってはアメリカにはありませんでした。

そしてやはり私は日本人です。

彼ら(アメリカ先住民)の事について語る事は私にとっては今でもおこがましい事だと感じたりします。
確かに私は彼らからいろいろなことを学ぶ機会をいただきました。実際に学びました。
かといってやはり彼らの文化であることには間違いなく、彼らの許可なく何かをするのは違うんじゃないかといつもどこかで思っているのです。

でも、私がせっかくあちらで学んできたことでとても人生に役立つことがあるから、それは伝えていきたいなと思っていて・・・ブロックが外れていくのには時間がかかりました。今でも葛藤しています。

ベア・ビュート。フールズクロウがヴィジョンクエストに使っていた山

実際、日本でも、行った事もないのに知ったかぶって話す人もいます。現地の現実を目の当たりにせず幻想とイメージだけで語る人もいます。そして、日本人で現地に行く人は増えましたが、行った事のない人が多いのをいいことに独自にアレンジして幻想を祭り上げている感も感じられたりと。
私は現地の人々がいうところの「ウォナビー(インディアンになりたがりやさん)」には絶対になりたくない。彼らとの約束や過ごした日々の大切な宝を台無しにするようなことをしたくない。彼らを裏切りたくありません。

もともと「ウォナビー(wanna be)」とは、インディアンに憧れを持った白人が、メディスンマンに会ってちょっと学んだだけで『私はインディアンに認められたメディスンマンだ!』とか言う人を指します。
お金になるので観光地に多い。
彼らの文化をお金にしたがる人たちです。

そして、そういう人が増えるにつれてお金が欲しいインディアンが、ウォナビーをたくさん作ることで自らの文化を切り売りして生計を立てるようになります。
もちろんそんな人ばかりではありませんが、自らの伝統や魂を売ってしまうほど彼らは貧しいのも現実です。

クレイジーホース(タシュンカウィトコ)、ブラックエルク(ヘハカサパ)などがヴィジョンクエストした場所

私の後見人になってくれたWhiteThunderは、子供たちを白人の家に養子に出しました。
彼は居留区で伝統を守らなければならない立場のために居留区を出ることをしなかったのです。
子供たちは大学を出て立派な社会人になってアメリカ国民として生活をしています。 そういう人たちもいます。

WhiteThunderはとても厳しい人です。世が世なら酋長であり戦士です。
まるで修験者みたいにいかつい感じ。
だからいつも、厳しい目で現実と伝統の両方を見続けていて、異国人の私の問いに対して、最初はなかなかまともに相手をしてもらえませんでした。

そんな彼はあることがきっかけで私を導いてくれるようになったのは運命的だったなと思います。それはまた追々書いていこうと思います。

 

話が逸れましたが、私は日本でウォナビーにはなりたくない。
そういう意味でウォナビーになるためにインディアン居留区に行ったわけでもないことをあらかじめ書いておきます。

さて・・・《2度目のヴィジョン》です。

それは飼っていたフェレットが老齢(11歳)で虹の橋を渡った日のことです。
最初のヴィジョンを見てからというもの、情報集めのために本を読んだりインターネットで調べたりをしていました。
とにかく初めてだらけの事だったのですが、縁あって日本に来日中のネイティヴアメリカンフルート奏者のワークショップに行く機会があり、まさにその日。
動物のお墓のあるお寺に火葬のお願いをして、私はでかけました。
片道2時間くらいのところだったため、電車でうとうとしていた時に見たもの。
飼っていたフェレットを背中に乗せた白い狼がてくてくと歩いていく姿。

「後は任せなさい。安心して行ってくるように」
気が滅入っていて、行っても気分がすぐれないかもしれないと思っていたのですが、この時のワークショップの帰りに、その後運命的な出会いになるきっかけの本を勧められたのでした。

それは、ラコタ族の大聖人:フールズクロウの書籍。 まだ出たばかりで初めての翻訳本(フールズクロウについての本は他にも出ていますが翻訳されたのはそれだけ)でした。

それまでも、ネイティヴアメリカンについて書かれている有名な書籍を取り寄せては読んでいたのですが、私にとってはこのフールズクロウの本と、同じラコタ族のシャーマンでもあるブラックエルクについて書かれている本の2冊は別格でした。

そしてフールズクロウに関しては後々私とインディアン居留区を深く結びつける大きな存在になっていきます。

ヴィジョンクエストにむけて

《3度目のヴィジョン》
ほどなくして3度目のビジョンを見たのはドラムの音に囲まれた空間で瞑想をしていた時のこと。
近くに小川が流れている、森とも林ともつかない場所に私は瞑想している状態と同じ体制で座っていました。
木々の間から現れたのは最初のヴィジョンに現れた男性と白い狼。
気配だけですが周辺にたくさんの動物が来ている感じがしました。
白い狼は私のそばまでやって来てうずくまり、安心した様子で眠りにつきます。
太ももに感じる毛の感触。 少しごわごわした長くて硬さのある感触で、体は筋肉質な感じ。
猫はもちろん、犬とも違う。

男性は正面遠くに立っていました。私はようやく彼の全貌を見ることができました。
赤いふんどし、赤いローブ。 褐色で痩せた体でも華奢には見えず、漆黒の長い髪は三つ編み。
頭には最初のヴィジョンと違い、3枚の羽が頭頂部に簪のように刺さっていました。
気がつくと結構な時間瞑想(?)していたみたいで、かけていたドラムのCDは終わっていました。

フォートロビンソン。クレイジーホース(タシュンカウィトコ)が殺害された場所

《4度目のヴィジョン》
4度目のヴィジョンは完全に夢のような、しかし生々しいものでした。
この時の衝撃が私を本格的な行動に移させたのです。

4度目のヴィジョン・・・
それはとても生々しいものでした。
それまでのヴィジョンと明らかに異なるのは、今現在の私が白い狼を連れたインディアンの男性と出会うのとは違っていたことです。

一人の少年がいました。それが自分であることがわかります。
なぜなら、自分の視点はその少年の視点だからです。同時にそれを俯瞰している自分の視点もありました。

いくつかのテントがあって、大きなテントには長老たちがいます。
焚き火の周りには肉の塊が置かれていて、女性たちがそれを焼いています。
子供達は追いかけっこのようなことをしていて、あたりでは数人の男女が慌ただしくテントの片づけをして荷物をまとめていました。

すでにストーリーは進んでいました。

赤いふんどしをして赤いローブのようなものを肩にかけた男性。
羽を一枚頭に刺した彼はこちらをじっと見ながら、〈杖のようなもの)を膝の上に置いて握りしめています。
・・・・・それは最終的に〈杖ではなく〉別のものでした。それがわかるのはだいぶ後の話です。

彼は横たわった大きな丸太の上に腰掛けて、少年である私と話をしていました。

私「これからどうなるの?」
男「長老たちが今話をしている。 みんな逃げるんだ」

男性はそういって、遠くの山を見つめます。 雪が積もっていて白い山肌にたくさんのシダーウッドかスプリュースが覆っています。

男「俺はここに残る。 戦士だからな。 お前は行け」
私「ここに残る」
男「・・・・・ダメだ。みんなについていけ。長老会議の決定は絶対だ」

その男性は少年の兄なのか、とても慕っていて、とにかくここに残りたくてしかたない少年を諭しています。

やがて少年は馬に乗って、長老達と共に山の方へと逃げていきます。

後でわかったことですが、馬がアメリカにやってきたのは白人が来てからです。
それまでの暮らしに大きな革命をもたらした存在で、「白人がもたらしたもので唯一よかったのは馬だ」と言われるほど、重宝したのでした。 ということは、このヴィジョンとも夢ともつかないストーリーは、白人との戦いが激化している頃のことということでしょうか。

私は雪山を馬に乗ってたくさんの荷物に囲まれた中で登っていきます。
ところが、とつぜん一行が騒がしくなり隊列が崩れました。
狼達がやってきたからです。

その中で白い狼が少年である私をキッとにらみます。
首をふって『向こうを見ろ!』 そう語りかけてくるのです。

狼がクイックイッと鼻面を向けて示す方を見ます。 そこはさっきまでいた場所。
そこからたくさんの煙が立ち上っていました。

「大変だ・・・戻らなくちゃ・・・」

つづく・・・

 

 

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